飼育下では、かなりおっちょこちょいな面があるオカメインコ。
平らな机の上で突然つまずいたり、飛び回っていると思ったら疲れ果ててカーテンに突っ込んだり・・・
そこがまた愛くるしいところですが、
「こんな調子で、自然界では生きていけるの?」
と思った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、野生のオカメインコがどのように暮らしているのか、その生態についてわかりやすく紹介していきます。
生息地について
オカメインコが生息しているのはオーストラリア大陸の内陸部です。
オーストラリア大陸は土地が平坦で降水量が少ない、乾燥した地帯。
とりわけ内陸部には厳しい自然が広がっています。
オーストラリア内陸部のようす
砂漠や礫地(細かい岩石で覆われた土地)などの荒涼とした大地が続き、乾季には川や池が干上がってしまうこともしばしば。
人口密度も極めて低く、こうした地帯はアウトバックと呼ばれています。
雨が少ない
内陸部の年間降水量は 300 mm にも満たず、これは日本の平均の 5 分の 1 以下です。
乾季と雨季があり、雨がまったく降らない期間が続くこともあります。
寒暖差が大きい
内陸部は気温の変化が大きいです。
冬の夜間は氷点下まで冷え込むことがある一方、夏の昼間は 40 ℃前後まで上昇します。
一日の寒暖差はおよそ 15 ℃となっています。
乾燥した空気
内陸部は降水量よりも蒸発量が多く、ケッペンの気候区分では乾燥帯(砂漠・ステップ気候)に分類されています。
湿度が低く、一年を通して約 30 ~ 40 %しかありません。
参考)オカメインコの生息地にほど近い街 アリススプリングスの気象データ
出典 : Australian government Bureau of Meteorology https://www.bom.gov.au/
月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 最高気温 ℃ 36.4 35.1 32.7 28.2 23.1 19.8 19.7 22.7 27.4 31.0 33.7 35.4 最低気温 ℃ 21.5 20.7 17.5 12.6 8.2 5.0 4.0 6.0 10.3 14.8 17.9 20.2 降水量 mm 40.7 43.3 31.4 17.2 18.4 13.3 15.5 8.9 8.2 20.8 28.5 36.8
オーストラリアを観光しても、オカメインコはほぼ見かけません。
それは観光地の多くが、沿岸部の恵まれた自然の中に存在するからです。
オカメインコはその見た目に反し、非常に厳しい環境下で生きているのです。
オカメインコは移動している
「観光地にはいないけど、内陸に行けばオカメインコが観察できる!」
と思うかもしれませんが、残念ながらそうとは限りません。
実はこのオカメインコ、一か所に留まらず常に移動しているんです。
渡り鳥ではない
オカメインコの生息地はオーストラリア大陸のみです。
海を越えほかの大陸や島を行き来することはないので、渡り鳥ではありません。
区分上は年間を通して同じ地域に生息し繁殖も行う、留鳥となっています。
ではいったいどこへ移動しているのでしょうか。
住みよい場所を求めている
先ほど紹介した通り、オーストラリア内陸部は雨が少なく乾燥した地帯。
とはいえ、水や緑はちゃんと存在するんです。
森林はありませんが、丈の短い草や乾燥に強い樹木(ユーカリなど)はところどころに自生しています。
また、雨季になりある程度まとまった雨が降ると、植物の種がいっせいに芽吹いて豊かな環境が生まれます。
オカメインコは、こうした住みよい場所を求めて大陸を転々と移動するというわけです。
野生のオカメインコに出会うのは難しい
オーストラリア内陸部の乾季と雨季はきまぐれで、各地の環境は不規則に変化します。
オカメインコはそれらに敏感に反応し、拠点とする場所を移していきます。
決まったサイクルがないうえ、一度の雨ですみかを替えることも珍しくありません。
そのため、むやみに内陸へ行っても出会うのは難しいです。
野生のオカメインコを見たいなら、現地のガイドに依頼するほうがいいでしょう。
オカメインコの生息状況によっては、観察ツアーも行われているようです。
ただしツアーに参加したとしても、見られない可能性があることは理解しておきましょう。
つまりオカメインコはオーストラリア大陸を放浪しているんです。
区分上は留鳥ですが、国内を季節移動する漂鳥により近いとも考えられますね。
生態について
ここからはより詳しく野生での生態、ようすを紹介していきます。
オカメインコの一日
オカメインコは日の出とともに起き、日の入りとともに眠りにつきます。
日中は水や食べ物を探して飛び回ります。
ただし、ずっとそうしているわけではありません。
昼間は強い日差しが降りそそぎ、もっとも暑い時間には 40 ℃にもなるオーストラリア。
そんな中で運動をしてしまうと命にかかわります。
そのため高温となる時間帯はユーカリやアカシアの木陰で日差しを避け、羽繕いや昼寝などをしてのんびり過ごしています。
生態系では下位
生態系において下位の存在であるオカメインコは、次のような天敵たちに狙われています。
- 猛禽類 (タカ・ハヤブサ など)
- 爬虫類 (ヘビ・オオトカゲ など)
- 哺乳類 (ディンゴ など)
これらから身を守るには、常に 360 °警戒しなくてはなりません。
オカメインコは臆病で知られていますが、こうした背景があるからなのでしょう。
群れで生活する
生態系下位であることも影響してか、オカメインコは群れをなします。
基本的に 10 ~ 100 羽程度の集団(コロニー)で生活しています。
オカメインコは巣立ち後もしばらく親と暮らすため、群れには血のつながりがあることが多いです。
ただ、気候によっては水や食べ物を得られる場所が限られることもあります。
さらに大きな集団になったり、セキセイインコなどほかの種類と混ざって群れる場合もあるようです。
種を食べている
オカメインコの主食は植物の種子です。
主に以下の種類を好んで食べます。
- アカシア (マメの仲間)
- スピニフェックス (イネの仲間)
地面に降り立ち植物をついばむところがよく見られますよ。
オーストラリア最速?
よく「オーストラリア最速」といわれるオカメインコですが、そんなことはありません。
速さは天敵の猛禽類にほぼ敵いません。
それどころか、あの小さなセキセイインコにすら置いていかれる始末です。
しかし、ただ遅いわけでもありません。
先ほどオカメインコはときに 数千 km もの距離を移動すると紹介しましたね。
そう、持久力に秀でているんです。
他種のインコやオウムと比べて圧倒的。
常に移動を続けるオカメインコは、長距離に適した進化をとげたようです。
いつでも繁殖できる
繫殖は親鳥・雛ともにエネルギーが必要な大仕事です。
環境が整っていることが成功率に大きく関わります。
オーストラリアの不安定な自然の中で、繁殖に適した場所は決して多くありません。
そのためオカメインコは、いい環境さえあれば時期を問わずいつでも繁殖を行います。
雨が降り緑が広がれば、たとえ寒くても関係ないようです。
木のうろを巣として利用し、そこでだいたい一日おきに 4 ~ 6 個の卵を産みます。
卵はオスメス交代で温められ、約 22 日で孵化。
雛は孵ってからおよそ 6 週間で巣立ちますが、半年近くは親とともに行動し生きる術を学びます。
日本では野生として生きていけない
「日本の豊かな自然環境ならば、野生でも生きていけるのでは?」
と思うかもしれません。
これは大きな間違いです。
ペットは自然を知らない
ペットとして育ったオカメインコは、自然を知りません。
外に出る機会といえば、たまの散歩や病院くらいのものです。
たとえ同種であっても、野生とペットでは能力がまったく違います。
野生生物を見たことがなければ、自分で食べ物を探したこともない。
そんな鳥がたった一羽で生きていけるでしょうか。
自然が厳しいのは日本も同じです。
外に逃げる=死
そもそもオーストラリアと日本では環境が大きく異なります。
外に逃げたオカメインコの大部分は適応できずに死ぬ、これが現実です。
慣れない環境に体力を奪われ動けなくなったり、カラスやネコに襲われたり。
飼い主のもとへ帰ってくることはほぼないでしょう。
誰かが保護してくれるケースもありますが、期待するような確率ではありません。
飼い主がやるべきこと
最悪の結果を防ぐために飼い主ができるのは、外に逃がさないことです。
オカメインコは明るく開けた空間をめがけて飛んでいきます。
これは本能なので、どうしようもありません。
飼い主が細心の注意を払いましょう。
「一瞬ドアを開け閉めするだけ」
「なついているから大丈夫」
こうした油断や思い込みをしてはいけません。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では野生のオカメインコがどのように暮らしているのか、その生態について紹介しました。
飼育下ではなかなか想像できない、過酷な環境を生き抜くたくましさが感じられたのではないでしょうか。
野鳥としての姿を知ることで特性がわかり、飼っているオカメインコの暮らしにも活かせる部分があると思います。
少しでも参考にしていただけたら、とてもうれしいです。
当サイトでは、ほかにもオカメインコに関する様々な情報をまとめ発信しています。
よろしければぜひご覧ください。
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